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不自由な課題が生むもの・児童クラス

  • 執筆者の写真: 佐々木敏光
    佐々木敏光
  • 2022年3月30日
  • 読了時間: 5分

更新日:2月22日

 「子供さんの絵は自由でいいですね」と、発表会に足を運んでくださった方から声を掛けていただきます。また見学に来られた保護者の方から「自由に描かせているのですか?」といった質問を受けることも多くあります。



 発表会の場合〈自由〉というのは誉め言葉の挨拶みたいなものなので「ありがとうございます」と返せば問題はないと思うのですが、教室見学の「自由に描かせているのですか?」の場合はそうはいかず「自由に描かせているという認識はあまりないんです」というような言葉をいつも返しています。


 多分、この教室の生徒も自由に描いているという認識はないと思います。教室に来るとまず講師の私から課題が出されて、制作が始まると講師のアドバイス、出来上がっても講師のOKが出ないと終わらないこともあります。しかし見学の保護者の方から出てくる「自由」という言葉は自然に出てきているように感じるので描いている絵を見てそう思ったのであれば嬉しい限りです。



 

 実は教室でも自由に好きなように描かせることがあります。しかしそれは課題を拒否する生徒に対して何を描くのかを自分で決めてもらい描いてもらう時、まさしく[自由に描く]です。しかしその[自由]は結果的に毎週、同じもの(描けるもの)を繰り返し描くことになり、他の生徒の出来上がっていく作品と自分の作品を見比べ、このままではうまくないという事を感じ自由が不自由に変化したことに気がついていきます。その間、講師はアドバイスをし、絵の感想を伝え続け、そういう生徒が道を変える時にその道を与えます。(我慢比べ的な感じがありますが、その点はお父さんお母さんの許容範囲の時間かなと思っています・・・)


 上記したように自由に描かせるということは経験上、同じものを繰り返して描くという事になり、またそのことによって不自由さを感じ取っていく事にもつながっていく場合があります。

 自由を表に出せば裏の不自由が幅を利かせるのです。




 もちろん全ての児童に当てはめていいわけではないと思います。課題を拒否する場合でもいくつものパターンがあるからです。上記した例はおそらくという瞬間的に感じるものを言葉に発し、講師や周りの人たちの反応を見たり、従わないプライドを持つなど、おそらく教室だけではなく日常的に行われていることを想像させます。


 もう一つの違ったパターンも紹介しておきます。講師が提案した課題よりも自らの描きたいものに対する欲求が大きい場合、これは教室課題に固執しないで柔軟にその生徒にとってより良い方向に転換していかなければならないと思います。


 この教室で課題を切り替えていく2例を紹介します。


 ① 課題の中に生徒の描きたいものを入れ込んでいく

 例えば絵に感情を入れ込む児童の中には擬音やセリフなどを言いながら、物語を作り、描いている時があります。この状態の時、同じもの(同じようなものを)を描いていることも多くありますが、絵で遊ぶという絵画にとって重要な要素を育てているとも考えられます。このような時は課題の中に描きたいものを描き入れるなどの工夫を加えて制作します。


 ② 課題を優先させない

 興味のあるものなら繰り返し描いても不自由さを感じない生徒もいます。何度同じものを描いても飽きないのです。(もちろん教室の1時間30分の間に何枚も描いていれば飽きますが、それでも次の週には新鮮な気持ちで同じものを描く事が出来ます)自閉症や自閉症よりの児童に多く見られるような気がしますが、生徒に合っていると感じられる課題なら虎視眈々と課題制作をするチャンスを狙った方が良いと思います。


 (同じものを描く事はお父さんお母さんの理解がないとできません。好きなようにさせていただいていることに感謝しています)


 前述した発表会や教室見学などでお世辞抜きで教室の作品が自由と感じられているのであれば、それは制作することによって個性が刺激され、その表現が[自由]と感じられるのではないかと思います。

 不自由(教室課題)を表に出せば自由が負けまいとニョキニョキと頭をもたげてくるという事です。

 課題を制作するという事はそれ事態が生徒にとっては不自由な事、それを前提に教室は動いており、成功するかどうかは(生徒にとって作りたい、描きたいと思わせる事も大事ですが)課題が作品を完成するまで魅力を保つことが出来るかにかかっています。

 

 大事なのは制作中で、魅力ある課題であるために講師のアドバイスなどがあるという事です。

これは本当に重要だと思いますが・・・これが難しい。



 自由を表に出せば裏の不自由が幅を利かせ、逆に不自由を(教室課題)を表に出せば自由が負けまいとニョキニョキと頭をもたげてくる。


 何を言いたいかというと、この教室の児童クラスではベースが[課題という不自由]で、そこから[自由という個性]が頭をもたげてニョキニョキと出てくる、それを講師は具体的な言葉に変換して生徒に伝える。これが現在のささき絵画教室児童クラスのあり方です。




 


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